人工の太陽を地上で実現し発電に利用する試み、核融合発電が再び注目を集めています。その理由は、核融合発電が発電時にCO2を出さないことに加え、以下の利点を有するからだと思います。
1.暴走しない・・・2つの理由があります。①核融合反応は制御なしではすぐに止まる(つまり電源喪失すればすぐに止まる)。②炉内には核融合反応を起こす原料がわずかしか存在せず、全部が反応しても巨大なエネルギーを発生しない。
2.資源(燃料)がほぼ無限にあり、かつ偏在していない・・・燃料は重水素と三重水素(共に水素の同位体)です。重水素は水(海水)から採取できます。三重水素はリチュウム6からブランケット(炉壁の一部)内で製造し、リチュウム6は海水から採取する予定です。その際、同時に取れるリチュウム7(こちらの方が多い)はリチュウム電池の原料として使えます。
3.燃料に含まれる、あるいは発電時に生成される放射性物質は取り扱いが比較的容易・・・放射性物質の三重水素の半減期は約12年で発電中に中性子により放射化される炉壁内の物質も約100年程度管理すれば取り扱い容易な放射線量になります。
最大の課題は、実用炉まで30年以上かかると予想されていることだと思います(現在、実験炉の建設が最終段階にあり、その後、原型炉そして実用炉建設へと続く予定です)。
かつて、核融合炉への期待が高まった時期がありました。今は国際協力の実験炉ITERの建設が進展し、日欧の実験炉JT60SAの実験が一部開始されるなどしたため再び期待が高まっています。
さらに、米国、日本等で核融合炉発電のベンチャー企業が設立され多額の資金を集めています。核融合発電を将来の主要なエネルギー源の一つとするかどうかを決断する時期が迫っています。こうした状況下、より多くの人に核融合炉を知ってもらうことは有意義なことだと考えています。そこで核融合発電について解説するスライドを公開することにしました。なおこのスライドは、かつて、東京理科大学理工学部電気電子情報工学科で私が開講していたプラズマ工学の講義の一部を基にしています。
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